※原文に章タイトルはありません。分かりやすいように勝手につけています。
Chapter.7 両目を隠された女王
北アイルランドのロンドンデリーにやってきたヴェルト、アインシュタイン、テスラ。街の城壁の周囲を散策すると、ある一台の砲台の前で崩壊エネルギー測定器が反応。そこには「両目を隠された女王」とメッセージが隠されていた。アインシュタインはそれを女王ジェーン・グレイと推測した。
女王ジェーン・グレイ イングランド史上初の女王。在位9日でメアリー1世によって廃位され、処刑された。彼女が両目を隠された状態で処刑される場面を描いた絵画が実在している。
三人はロンドンのナショナル・ギャラリーへと。目的の絵画は、1928年のテムズ川の洪水により被害を受けた作品の1つであるという。しかし、保管場所で見つけた絵画はカビ1つも生えていない状態で見つかった。無傷で済んだ原因は絵画表面に施された謎の薄い膜。アインシュタインはこれこそが魂鋼であると言い、これを回収すると管理人に申し出た。
Chapter.8 最後の魂鋼
特殊な機械で魂鋼を回収し、三人は実験室に帰ってきた。
アインシュタインの特殊体質? 不快な金属音の類に耐性がある。魂鋼を回収した天命の機械は、駆動時に非常に不快な音をだす。ヴェルトはこの音で具合を悪くしていたが、アインシュタインは聞いても全く問題ない。
ヴェルトはアインシュタインに実験室のもうひとりのアシスタントであるエイダの元へ案内される。エイダ(ADA)は前文明の遺産である崩壊エネルギーコンピュータシステム。現文明最先端のコンピュータを遥かに凌ぐ性能を有していた。
アインシュタインはエイダに魂鋼の中にあった記録の解析を依頼。中にあったのは映像資料と暗号化されたデータだった。
映像に記録されていたのは、昔の戦乙女の服(修道服)を着たH.A本人。回りくどい方法をとったのはやはり天命を恐れてのことだった。映像によれば最後の魂鋼に、崩壊を根絶することが不可能であることを示す重要な証拠を残したという。

有限体の楕円曲線上の離散対数を利用した暗号 エイダの全力をもってしても解読に4週間はかかる。 →楕円曲線暗号 - Wikipedia 作中は1955年だが、発明されたのは1985年。
Chapter.9 酔っぱらいの話
エイダが全力で暗号解読に取り掛かったことにより、実験室は4週間の休暇に入った。ヴェルトの元にはまた天命本部の友人フールαから手紙が届く。天命のハロウィンイベントで酒を飲み、酔ったいきおいで聖女カレンや崩壊との戦いなどについて長々と書かれた手紙だった。
聖女カレンについて(Part1) カレンの血統(カスラナ家)は普通ではないが、絶対的定義では普通の人間と大差はないとしている。 聖女カレンの最期は俗人に死刑を告げられ崩壊獣に殺された(?)※酔っ払った状態で書かれたせいか状況が分かりづらい
フレデリカ・ニコラ・テスラ テスラの本名。酒癖の悪いテスラが酔っ払った時にヴェルトに教えた。
Chapter.10 前文明の知識
ウィーン13区天命本部で北米支部の責任者プランクは評議会に参加していた。プランクは北米支部のスポンサーエジソンについて報告。だが評議会の面々はそれよりも重要なことがある、とプランクの意見にとりあうつもりはない様子。
彼らが重要視していたのは未公開分の死海文書。エリアスが解読したところ、書かれた時代には持ち得ない知識が記されていた。特に価値ある情報は、エネルギー転換方式。知識の源は前文明の遺跡だった。
エネルギー転換方式 崩壊エネルギーを制御可能なエネルギーに変える方法。メインストーリーで律者に対して使われたエネルギー転化装置に繋がる技術。
猫の餌やりに行くテスラに付き合い、墓地にやってきたヴェルト。そこでひと月前アメリカの空港にいた天命本部の人間、元戦乙女のリアーナに出会う。リアーナは亡くなった同僚の墓参りにきていた。ヴェルトはベルリンで戦った戦乙女達の話を聞き、落ち込みながらもリアーナを慰める。
そこに突如現れた謎の飛行物体。リアーナは元戦乙女としての性か、謎の機械を警戒して破壊してしまう。飛行物体の正体はハロウィンのためにテスラが作ったいたずら用のロボットだった。
Chapter. 11 ムーンライト・スローン
42実験室に二人の来客が訪れた。一人は元戦乙女のリアーナ、そしてもうひとりはエリアスの息子ヨアヒム。彼はよく実験室に来ており、博士らに遊び相手になって貰っていた。
黒淵白花 リアーナがロボットを破壊するのに使用。ロボットの配線を内部から全て切断していた。黒淵白花は分解と創生の能力を併せ持った兵器。分解は「標的を内から外へと無秩序な状態に瓦解させる」。 創生の能力は生命体にしか使用できない。破壊されたものを修復するには図面=DNAが必要。DNAを持たない機械は直すことができない。
一方、ニューヨーク、エジソンタワーの地下実験室。シュレーディンガー達は、崩壊エネルギーを通常の内部エネルギーに変換する実験を行っていた。実験の成功を喜び興奮したナンシーは、プロジェクトを「ムーンライト・スローン」と名付けた。
ナンシーの台詞 「昇れ、美しい月よ!」「妬み深い太陽の光を消してしまえ」 ロミオとジュリエットの台詞。有名な「ロミオ、貴方はどうしてロミオなの」の前にロミオが言った台詞。
Chapter.12 ロンドンデリーの歌
実験室の1ヶ月に及ぶ休暇もあと数日。ヴェルト達はオフシーズンで安く楽しめる海岸リゾート「サウスエンド=オン=シー」へやってきた。リゾートの自室でヴェルトはプランクとした内緒話を思い出す。
ナンシーが北米支部で権力を持つ理由 わずか17歳で崩壊災害により両親を失ったナンシーは、遺産であるゼネラル・メカトロニクス(GME)を受け継ぎ代表取締役となった。 ナンシーは崩壊に対する知識は皆無だったものの、自身の持つ資産力を武器に天命の北米支部を立ち上げさせた。ヨーロッパ復興計画という名目で本部に130億の資金援助があったという。当初、北米には前文明の遺跡が見つかっていなかったため、本部は北米支部の設立を許可した。
天命評議会が興味を持つ魂鋼 評議会は各支部が魂鋼について技術開発して解読することを許可していない。前文明の武器技術は、使用者の崩壊エネルギー適応性対して厳しい条件がかされる。つまり、魂鋼の武器を運用するには戦乙女を味方につけることが必須。人間である以上、裏切る可能性がある。その危険性から評議会は権限を厳しく制限している。
プランクが話したのは天命内の複雑な立場、権力争いについてだった。その中で42実験室は特殊な立場にある。現在捜索している魂鋼は、争いの火種となりかねない存在だった。ヴェルトは話を聞き、天命内部でのことはよく分からないがアインシュタインらが巻き込まれてほしくないと思う。プランクは最後に「守るべき価値のある人を守って」とヴェルトに優しく忠告した。
回想するヴェルトの耳に響くピアノの音色。アインシュタインの弾くその曲にはなぜか聞き覚えがあり、歌詞までしっかりと暗唱することができた。
Danny Boy アイルランド民謡。ロンドンデリーの歌と呼ばれる旋律に歌詞をつけたもの。北アイルランドでは事実上の国歌としての扱いを受けるほど人気が高い。 歌詞の内容は女性が男性へ別れを告げる歌、戦地へ赴く子や孫を送り出す歌などと解釈される。