Chapter.5 地中海の花嫁
ビアンカはロシアの孤児院で過ごした頃の夢を見る。目覚めるとカレドニア号は目的地に着いていた。
カレドニア号が寄港したのはアレクサンドリア。カレドニア号にとっては「地元」とも言える場所だった。シェイクスピアは新旧船員がペアとなりアレクサンドリアを楽しむ休暇を言い渡す。
ビアンカはジミーとペアとなり町に繰り出すこととなった。税関もないアレクサンドリアを管理しているのは、警察のロボット。町にはガイドロボットも存在しており、それらを管理しているのは都市管理協会という機関だとジミーは教える。
ビアンカの誕生日1月1日 誕生日が分からなかったため孤児院の先生が勝手に決めたもの。
都市管理協会 所在地から市政庁とも呼ばれる。ロボットで治安維持と課税を行っている。 メンバーは年一回の選挙で選出される。 ロボットシステムは自己メンテナンスで維持されており、機関の仕事は誰にでもできる。
ドラクマ アレクサンドリアの通貨。1ドラクマは10グレーンの金に相当。1グレーンは平均的な小麦1粒分の重量。 ドラクマは実在の貨幣であり、古代ギリシャ、ヘレニズム世界で使われた。
ガイドロボットにガイドを頼むかどうか迷う二人の前に、ガイドをしてやろうという人物が割り込んでくる。彼女は哲学者のタレス・ホ・ミレトス。アレクサンドリアの大図書館の形而上学研究所の所長であった。
ビアンカ達と話しがしてみたいというタレスは、金を貰ってガイドをするのではなく、代わりにガイドロボットの料金を払うことで会話の機会を得ることにした。ガイドロボットとタレスの解説で町の歴史や制度を知るビアンカ。
アレクサンドリア図書館 古代のエジプトアレクサンドリアにあった同時代で最大の図書館。大きな研究機関の一部でもあった。 ユリウス・カエサルがアレクサンドリアで包囲された時に、一部が焼けたことがある。 シナリオの「大図書館」 図書館自体は2000年の歴史があり、研究機関は設立から200年ほど。研究機関はタレスを含めて3人しかいない。都市管理ロボットはこの大図書館が設計製造している。 元は僭主の個人博物館。 異世界からきたよそ者の口述筆記によって再現された作品も収蔵している。ビアンカの世界のホムの物語もある。 タレスの年収 日給200ドラクマ。ビアンカが換算したところ年収144万ユーロ。これはA級戦乙女の給料を凌ぐ額。1ユーロ125円として円にすると1億8千万円。 公共契約奴隷 アレクサンドリアではまだ奴隷制が一部残っている。町で破産すると、返済できるまで公共契約奴隷となる。利息は7.5%。親が返済できなければ子が残りを返済しなければならない。 監獄や死刑といったものがない代わりにこの制度がある。 100年前の僭主 当時アレクサンドリアを牛耳っていた海賊の軍閥集団。
Chapter.6 簡単な背理法
アラン・チューリングの論文に夢中になっていたジミーは、ビアンカ達とはぐれてしまった。さらにジミーは論文を呼んでいる途中、強烈な眠気に襲われ、気を失った。最後に感じたのは香水の匂いだった。
はぐれたと思われる場所を探しても見つからないジミー。監視カメラにも彼の痕跡は記録されていなかった。タレスは館長のミケランジェロに図書館内の封鎖と捜索を要請した。
顧問探偵のシャンポリオンは、ロボットの中にジミーが詰め込まれて運ばれたと推理。ロボットを管理する信号「心拍」と監視カメラの映像を照らし合わせた結果、図書館の管理下にないロボットが3台が館外に出ていたことが判明した。
外来者の行方不明事件 館内の捜索を要請する際、タレスが説得材料にした事件。ジミーの件も同一犯人によるものだと説明した。 ジャン=フランソワ・シャンポリオン 考古学者であり図書館の顧問探偵。実在するフランスのエジプト考古学者。ヒエログリフを解明したことで有名。 ネイト シャンポリオンの助手の少女。鼻が利く。
ネイトの鼻をつかいジミーを探すことにした一行は、ジミーの自室にあるカレドニア号に戻る。危険に飛び込もうとするビアンカをリタは止めようとするが、ビアンカはネイト達とともに捜索に向かった。
Chapter.7 若きワットの悩み
目を覚ましたジミーはひとり牢屋の中にいた。不安になるジミーの前に現れたのはアリスと名乗る少女。アリスは誘拐したわけを説明する。
ジミーが囚われていたのは、とある博士の実験場。博士は街の発展を願い、アリスを作った人物。しかし、街の人間からは異端視され街から追放された。
アリスは博士によって作られた機械「4号機」。博士は過労によって50時間前に死亡。残された助手はジミーを含む学者を3人誘拐し、アリスの運用を続けようとした。しかし、アリスの「脳」を見た途端、助手と2人の学者の間で諍いが起こり、みな死んでしまったという。
アリスは200時間ごとにメンテナンスを受けないと死んでしまう。しかし、博士はアリスにメンテナンス資料の閲覧権限を与えなかった。アリスには他人の手が必要だった。
アリスは混合型スーパーバイオコンピュータ。生きた人間の脳を組み合わせて作られたコンピュータであった。倫理的な面で問題を抱えるアリスは、ジミーに強要はできないという。ジミーはアリスの身の上に同情し、彼女を助けることに決めた。
生きた人間の脳 3号では培養された脳とされているがアリスが人間の脳を使ったとはここでは明言されていない。Ch9で生前の博士が、同意をとった上で生きた人間の脳を使用したという経緯を口にしている。
ジミーはメンテナンス資料を読み終え、メンテナンスの手順をアリスに教えながら実行。作業をしながらジミーはアリスから童話の話を聞く。
アリスの名の由来は童話の主人公だという。その話はジミーの知るものとは異なっていた。(ジャックと豆の木、神曲のパロディなど)
Chapter.8 仮面の下
硫黄湖のビアンカ達
ジミーの匂いを追い辿り着いたのは硫黄湖、アラメイン付近の火山地帯。毒ガスである硫化水素対策をするため、ネイトは都市管理協会の会長シェリーに協力を頼む。
例の能力 ネイトを待つ間、ビアンカとシャンポリオンがやっていたチェスを覗き見するために使ったリタの能力。ビアンカの背後にいてもずっと気づかれなかった。
ネイトが、装備と戦力をもってビアンカ達の元へ戻る。すると街からは煙が上がっていた。
アレクサンドリアのからくり
ネイトが去った後、都市管理協会に現れたのはシェイクスピアと鉄仮面。鉄仮面は仮面を外して会長に次元旅行者のシュレーディンガーだと名乗る。

エルヴィン・リアーナ・シュレーディンガー ビジュアルノベル「ネゲントロピー」では体の半分が量子化し、量子の海で行方不明になったとされている。 本人曰く「深淵より来たる次元旅行者」「量子分布のユニタリー性を失った擬態生物」。 賢者の石、あらゆるロボットに思考能力を与えるテッセラクト シュレーディンガーがデュランダルと同列に考えられるものとしてあげた都市伝説。 シュレーディンガーが語ったデュランダルの力 赤い勇気の結晶:特定の魔力波長を追跡できる。ビアンカが握った時に他の結晶の位置が分かったのはこのためか。 藍色の理性の結晶:あらゆる情報を瞬時に分析できる。 理性の結晶:人類の認知能力を模倣できる。
シュレーディンガーは街を観察してある疑問を抱いた。街のロボットは、複雑な人間の仕事を代替できるほどの能力がある。彼らの認知能力は「本物の人工知能」に等しい。しかし、ロボット自体はただの端末であり、背後にはロボットに命令を出すメインブレインがある。数万の脳を模倣するそれは、この時代に一体どうやって作られたのか。シュレーディンガーは協会長に問いかけた。
ロボットはデュランダルの「理性の結晶」を使って運用されていた。シュレーディンガーはこのシステムの欠陥を指摘する。欠陥とは通信設備の脆弱性にあった。
メンテナンス作業中のアリスとジミー
アリスの話を聞いている最中、ジミーはけたたましい警報を聞く。電力供給に異常が発生したことを告げる警報だった。電力が足りなくなり、少女の体が休眠してしまうアリス。
原因はアリスのバックグラウンドで実行されていたプログラム。それが通信基地局の電力を消費させ管理権限を奪おうとしていた。
画面越しでしか会話できなくなったアリスは博士の計画を話し出す。博士と助手は、アリスを利用し自分たちを追放した都市に復讐しようとしていた。アリスは情報戦に特化した兵器。アリスでロボットを操り、都市を滅ぼすそれが彼らの計画だった。