エリシアのみスクショし損ねたのでありません。
第一位 ケビン
ヒーローは常に孤独である。
彼が自らヒーローになりたいと望んだことは一度もなかった。
ケビンは居場所を失ってしまった身である。崩れ落ちた故郷を背にし、慌てて逃げたしたのだ。全てはそこから始まった。青年は憧れの人を追いかけ、舞う蛾の片羽と化す。終末の星の残光を身に宿し、故郷を蝕む厄災に対して反旗を翻したのだ。
数多の侵攻、数多の反撃。守りたいものが多けれは多いほど、救えるものは少なくなる。
災いは満身創痍の町を飲み込む。それはまるで雪崩のように文明の遺跡を喰らい尽くす。そして、彼の心の温度を封じ込めてしまった。
破は「人ではない存在になる」ことと引き換えに、弱さを捨て去り、過去に別れを告げた。唯一不変であるのは、全てを背負う意志と……習慣である。
氷と炎は刃となり、敵の姿を消し去り、紅氷に埋まる受難者の悲鳴でさえ掻き消す。
極寒の障壁は同行者すら阻んだ。冷え切った体、危険な一人旅、寒さを麻痺させたのは果たしてどちらなのか。
彼は先人を記憶し、友を記憶し、仲間を記憶する。背後で停滞しきった全ての存在を心に刻む。
ケビンは常に孤独である。
しかし、ヒーローになど、一度たりともなったことはない。
第三位 アポニア
彼女は敬虔な傾聴者だ。闇から神の言葉を謹聴する者。半分は影に陥り、半分は光に生きる。
罪悪が横行する「黄昏」の境に身を置き、か弱い命を守り続ける彼女はまるで、灰色の世界に存在する一筋の微光だ。
しかし、切々とした加護は檻と化し、心に至る関心は鴆毒となる。
守った全てが最後には焼き払われてしまい、その事実は漆黒の檻へと姿を変え、彼女を捕えた。
見知らぬ暗闇にいながらも、依然としてかっての信条を貫く彼女は自身を灯火とし、一筋の光に照らされることを願い続ける。
すへては、運命の糸が見える故。
絡まる糸は命を手繰り寄せ、未来を縛る。そして、全ての瞬間に明確な印を付けるのだ。「戒律」で規則を定めても、運命はいつも予測できない瞬間に反転する。一生の力を費やし細い糸を動かそうとしてみても、それはより強く縛られ、乱雑に絡み合うのみ。無数の敗北、唯々積み重なる骸を目にし、彼女は運命が不変であり、取り替えられぬことを知る。
彼女もまた、誰一人として照らすことを許されない。
運命が絡み合い3檻を編み出す。たた、彼女をそこに閉じ込めるために。
そして今、運命の糸が解れようとしている。彼女は静かに終末のを審判を待つ。それは、己の終わりでもある。
鴆毒:鴆という鳥の羽根にある毒。甘く美味。羽根を浸した酒はよく人を殺すという。
第四位 エデン
ムー大陸の伝説の歌姫。工テンの時代は歌声によって幕が上がリ、歌声によって幕を下ろす。
過去の栄光は言うまでもない。彼女の名はまるで宝石のように、文明の章に最も鮮やかな一ページを残した。
しかし、突如烈火が全てを喰らいくす。
それは繁華な舞台を焼き付くし、人々の喉頸を締め上けた。災厄と死の下、恐怖の灰燼がかっての輝きを覆う。
宝石は輝きを遮られ、終演を催促される。宝石の価値を見出だす者は消え去ったのた。
それでも歌声が絶えることはなかった。全てが無音の終焉へと帰るときも、彼女の声は響き渡る。
たとえ、誰一人として聞く者がいなくても、たとえ、賛美歌がいすれ哀歌へ変わろうと。
かってのすべてが文明と共に消滅する。それでも、彼女は荒れ果てた廃墟にいようと歌い続ける。永遠に止まることなく。まるで、その旋律を時の果てまで届けよプとしているかのように。
それこそが彼女の「価値」である。
富、名嘗、追い求めたもの。彼女のすべてが歌で作り上げられている以上、自身のすへてを歌に乗せるのだ。
彼女は時代を銘記する者、そして時代そのものでもある。
第五位 ヴィルヴィ
彼女は奇跡を届ける魔術師だ。
指をそっと鳴らすたけで、高い場所から垂らされた幕の裏に、理を覆す神話を誕生させる。
彼女は万物を作り出す匠だ。
噛み合う歯車、轟く蒸気。全ての不可解な空想を現実へと変える。あらゆる「法則」は彼女の指先で砕かれ、再構築される。
まるで彼女は初めて世に出る子供のように、「常理」と「異常」の狭間を歩む。そして、生涯の才を束の間の喝采へと捧げるのた。
彼女は生まれつきの役者た。
世界そのものが舞台であり、万物がその芝居の観客である。彼女は舞う蛾の羽と化し螺旋の奇跡を築き上ける。全てはただ、世界を驚かせるためた。
質美と質疑が彼女を囲む。華々しい命の輝きを疑う者は誰一人として存在しない。
それでも幕が下ろされ、芝居が終わり、浮かれた役者が一時の沈黙へと戻る時。そこにいるのは、ごく少数の者しか知らない、影の下に存在するウイルウイだ。
喧騒と静寂、光輝と暗闇、彼女の人生は分割され複雑なビースとなリ、不思議な光を屈折させる。
仮面の下に隠された真の顔を区別できる者は、そうそういないのだ。まるで、反転と矛盾に満ちた彼女の一生を、誰も評価できないかのように。
彼女もまた、他者の解読を望むはすがない。
それは舞台に立っための誇りであリ、「役者」としてのプライドでもある。
第六位 千劫
「非天」、変わり者。
この世に現れた時から、千劫は周りのすへてに馴染まない。
常人の域を超えた怪力、素顔を隠す仮面。彼の出現、もしくは、存在自体が人々を恐れさせる。
生まれつきの怪力と特異は、最終的に、彼を捕える檻へと変わった。
恨み、憎悪……泥沼が彼を蝕むと同時に、その背を支える。
恕リは彼を、全てを飲み込む烈火へ変えていく。垣騒に咆哮を重ね、全てを殺し尽くし、何もかもを砕くのだ。
しかし、彼は到底炎にはなれない。ただ、その身を火を追う蛾へ酒ませ、暗い「蛹」として蠢くのみ。
殺戮と恐怖に囲まれ、彼にまつわる伝説は物騒になる一方。そのことに対し、千劫は清々しさを感していた――彼は戦士なとではなく、殺戮者である。血に染まった伝説を前にして、弱者は逃けるのみ。残るは決死の覚悟で鍛えた匕首だ、戦うに値する。
しかし、戦った者は誰一人として勝利の天秤を傾けることはできなかった。
不敗の狂戦士はことうとう悠久の苦戦に陥リ、理性と自我を削られていく。
残るは心の奥で燃える怒りの炎。命を燃やし、今でも尚、不敗の脊梁支えている。
脊梁:背筋、背骨
第七位 スゥ
他人の影を辿り前へと進む。それがスウの人生だ。
彼は医者として、世の外側に存在する怪異との戦いに赴く。
それらの怪異は、世を崩壊させるほとの災難をもたらし、人類を蝕む疫病となった。
千分の一の機会を掴み、危機よリ逃れたあの日から、スウは人々が叶えられなかった願いを背負い始める。
日々重ねられる救助、日々重ねられる救われなかったものたち。災難により、青年の時間は空しく過ぎていく。それでも、彼の瞳は未た光を失っていない。
厄災が生まれ、彼は使命を得る。そして、須臾の夢幻で悟りを開き生まれ変わったもう一つの命を代価にして。
彼を導いていた無数の影は、災難の塵へと変わる。
天は孤立した命に仏の教えを授けた。無数の命を見送った彼は、世の理を超えた知恵を得る。
そして、時の果てで思索に耽る智者と化し、複雑怪奇な三千世界で、浮き沈みながら日々衰退していく文明が存続できる一筋の機会を探っている。
第八位 サクラ
桜は、散り易し。
華々しく咲き誇る短命の花が、運命の予言のように儚い一生の兆しとなっていることを、彼女はまだ知らなかった。
祖国が陥落し、少女は生きるために、唯一の妹と根無し草のような流浪の旅を始める。
幸いにして、彼女の傍にはまだ刀があった。
運命は彼女たちを暗い沼へと引きすり込もうとするが、少女は妹と手を繋ぎ、刀を強く握り締め、無言で立ち向かう。
刀は常に傍に置かれ、やがては彼女と共に火を追う蛾と化した。守護の名の下に、暗闇に酒む「毒蛹」は掃滅を繰リ返す。
その刃には彼女の過去と罪が刻まれていた。
集い、砕き、作り直し、湮滅※する。
「毒蛹」での輪転は彼女自身の輪転である。火を追う蛾の刃である以上、徐々に彼女は自身と手元の凶器の区別がつかなくなっていく。そして、ついに悲劇は唯一の家族のもとに訪れた。
大事にしていた妹が、恐怖と災難の根源へと変わる。
※湮滅:跡形もなく消えること、消すこと
第九位 コズマ
「成人」、すなわちそれは、盛大な別れである。
かっての自分に、かっての仲間に、かっての馴染んだ場所に別れを告げるのだ。
コズマはそれをはっきりと理解している。
ただ、別れを告げる必要があるものはあまりにも多すぎた。
幼い頃の出来事は、既に追うことができなくなっている。もしかしたら遠い過去に、ヒーローになるという大きな夢を抱いていたかもしれない。
とんな願いであれ、時はそれをかき消した。そして現在、昔の自分では想像もしていなかった人間になってしまった。
一体、いつ闇を、いつ正義の瀬戸際を歩むべきたったのか?記憶は既に曖昧となり、覚えているのは、「自警団」になれるよう願ったこと。光と影の狭間に佇み、町の平和を守るのだ。
そんな日々が続こうとした時、まるで早送りのボタンを押されたかのように、突如町は滅び、災難が訪れる。
彼は家族と友に別れを告げた。そして、憧れていた隊長が目の前で変わっていく光景を目にする。
……とうとう、自分の番となった。
異変と強大な力は共存する。やがて、少年の軀は喰われ、改造されていった。彼はかつての仲間の眼差しから、己の恐ろしさを知る。
それからは、町の影に潜むようになり、自身を完全に閭へと溶け込ませた。
一人ぼっちの少年は「旭光」を守り続ける。しかし、果たして彼自身の夜明けはいつ訪れるのだろうか。
第十位 メビウス
少女は生まれた時から死と共にいた。
母、父、そして周りの人々は、彼女に深さの異なる痕を残し、それそれ違った理由で離れて逝った。
悲しんでいないわけではない。たた、その痛みを感した瞬間に、より強烈な感情に入れ替わるのた。
心は死という靄に覆われ、別の何かが彼女を誘惑する。
それは古の神秘的な法則。そんな法則と対峙することで、胸が高鳴る。なんという……戦慄なのか!
幼少の頃の生い立ちは、心に種子を埋め込んた。その後の日々は昇進が続き、彼女は伝説を書き残したが、それでも心の奥に秘めた願いが消えることはなかった彼女は必す死の法則を見出すのである。
やがて災難が訪れ、世界の秩序を連れ去った。望んた好機は今なのたと、彼女は悟る。
そして彼女は責重なサンプルを手に入れる一一それは、自分自身だ。
小さな心に潜んでいるのは野望に満ちた深い魂。無数の報廻の中、彼女は静かにち続ける。求めるはただ無限の命。
いつかは生死の法則を掴み、万物の存亡を操ってみせる。自然の法則を書き換え、世の真理を手にする。
そのために、彼女は全てを代償にできるのだ。
第十一位 グレーシュ
彼女自身にも自覚があるが、グレーシュはいい子だ。
優しく見守ってくれるアポニアお母さん。無ロだが世話を焼いてくれるコズマ。そして英傑たちが気遣ってくれるからこそ、彼女は暖かな黄色に囲まれることが出来るのだ。
彼女は微笑む。
いつからか、沈黙し続けることが習慣となった。彼女はすっと静かに、漠然と自分の絵を見つめ、色を混ぜ、絵の具を塗り付ける。全ての想いを絵の模様へと変えるのだ。
彼女自身に自覚はないが、グレーシュは変わった子だ。
「異常」はナイフのように高い位置に吊るされる。グレーシュは無関心でナイフを握り、彼らの恐怖を揺さぶる。
恐怖は巨獣へと変わり、グレーシュの絵の中に収められる。そして、皆の目の前で、彼らの戦慄を具現させ、それを飲み込む。
グレーシュは何も知らないのだ。唯々、無言のまま描き続ける。心の中にある色で目の前の紙を染め上けていく。
そこは彼女の世界の全てた。笑顔の代わりに絵を描き、泣き顔の代わりに絵を描く。目に映る世界の全てを絵に印すのだ。
かて、目の前の色が少なくなっていく。暖かな黄色と光沢のある黒が褪せていく。燦然と輝く満天の星光だけが、悠々とした世界の果てにある遥か遠い蒼穹まで伸び続ける。
グレーシュは未だ描き続けている。記憶の色を使い、星の光と共に宇宙の果てまで描くのだ。
第十二位 華
自分は今までとうやって成長してきたのたろう?
答えが見当たらない。或いは、既に忘れ去ってしまったのかもしれない。
あの頃の少女は、まるで一羽の小鳥のように瑞々しかった。ーー彼女の名、「華」のように。
彼女は派手ではない。同し年頃の者たちと同しく、普通に育ち、己の少女時代を過ごしていたはすたった。
……もし、崩壊が訪れなければ。突如、災難が平穏な日常を壊す。少女はやむを得す武器を手にした。同じ年頃の者たちがそうしたように。それからは彼女の夢に、危険と困難が訪れる。
これが多難な運命の序章に過きないことを、彼女はまた知らなかった。
災難が徐々に近づいてくる。少女はやむを得ず手にした武器で敵わぬ相手と戦うことになった。そばにいた者たちは次々と目の光を失っていく。彼女はただただ、少ない生き残れる可能性に必死にしがみついた。
そして、少女は生き残る。同じ年頃の者たちとは違って、満身創痍の記憶と引き換るえに、力を手に入れたのた。
それが千年、万年も続く悪夢の始まりとなる。
大事に記憶をしまえは、何時の日かそれを捨てさるを得なくなる。回り回って、それを繰り返し続ける。
どんな未来へ向かっているのか、彼女自身にももうわからなくなっていた。ぼやけた過去も記憶の消散と共に砕けていく。
それが旅の始まり。彼女はまるで迷える小鳥のように、運命の迷路を彷徨い続ける。
第十三位 パルドフェリス
バルドフェリスは些細なことにも喜びを見出す人間だ。
黄昏を辿り、溶炉のような過去を置き去りにし、軽い足取りでやってくる。
何せ、過去の苦難は過ぎたこと。目の前の楽しみとお宝は簡単に手に入るのだ。
道を切り開き、住処を作り、物資を集める。一見居場所がないように見えるが、彼女は何処であろうと己の家にすることができた。
その時に、彼女は悟ったのである。自分は幸運の持ち主だ。彼女は小さな幸運を守りつつ、騒がしく乱れた無法地帯で平穏な第らし方を探っていた。
しかし、やがて災難が訪れる。
博打と誤解が、少女を火を追う蛾の領地へと導いた。損得を知らぬまま、少女は多難な運命によって予測のつかない道へと引きすり込まれる。
軌道は逸れてしまったものの、彼女はかっての自由を懐かしみ、丁寧に自分の生活を整える。生まれた時から彼女の人生は不運に満ち溢れ、本物の安寧なと手にしたことはない。
それを知らないまま、彼女は必死に目の前の楽しみを保とうとする。何せ、それたが彼女の唯一の才能なのだ。
災いは隅々まで大地を貪り、命と文明を飲み込む。
空ろな喜びは塵へと返る。文明の廃墟で、少女は運命が授けたサイコロを掴んだ。もしくは、偶然にも背負うべき責任を掴んたのだ。
彼女の運はいつも悪くない。それが唯一のカでもある。
パルドフェリス