黒ゼーレって前文明の死の律者?について考えたら「もう一人の私」って崩壊3rdのサブテーマな気がしてきた。

1. 黒ゼーレは白ゼーレにとってどんな存在か

黒ゼーレは白ゼーレが辛い時に現れるもうひとりのゼーレ。例えば、孤児院時代にはブローニャに意地悪をするシン・マールに対して、白ゼーレは何もできなかったが、彼女の代わりに黒ゼーレはしっかりとやり返していた。

辛いことを肩代わりするという役割面では、他の創作物でもよく見られる多重人格の設定となっている。

(※昔はこのような症状を多重人格と呼んでいたが、現在は解離性同一症という)

2. そもそも黒ゼーレはどういう存在なのか?

聖痕が持つ意識

公式ファンブックの「双生の彼岸花」の紹介文では「天然聖痕が持つ裏意識」と黒ゼーレを説明している。

紹介PVの方では「聖痕の意識」「心に潜む悪魔」と表現されている。

誰の心にも 自分にしか見えない「悪魔」が潜んでいます

ですが 誰もがそれを克服できるわけではありません

悪魔と取引して後悔する人もいれば……

悪魔と同化する人もいるのですから

ブローニャによるナレーション

(双生の彼岸花の好感度テキストは未確認)

聖痕のおさらい

聖痕とはヒトの染色体中に存在する抗崩壊遺伝子のこと。またこの遺伝子を持つことによって体表に出現するアザのことも聖痕という。前文明の技術によって受精卵や胚芽にこの遺伝子を組み込まれたことで、アザが発現していた。 1崩壊3rd メモリアルファンブック | ファミ通と電撃の攻略本 聖痕の用語説明より

現人類もこの遺伝子を受け継いでいるが、数万年の世代交代の中で断片化し、抗崩壊の形質を失ってしまった。天然聖痕を持つものは非常にまれ。ゼーレはこの数少ない天然聖痕所持者。

聖痕が持つ意識・記憶

ファンブックによる解説によると聖痕(抗崩壊遺伝子)は

  • 世代交代の際に記憶を受け継ぐ
  • 近似種の聖痕を持つ者同士で記憶や情報を共有する
  • その結果、故人の出来事を追体験する

この働きによって、キアナは500年前の八重村の出来事を追体験する。それがオープンワールド「桜の輪廻」となる。

3. 漫画での描写

公式漫画「幻海悲歌編」

私は数万年前から聖痕に刻まれている記憶

黒ゼーレの台詞

崩壊学園の時点でも黒ゼーレが聖痕に宿る意識(記憶)という設定があったようだ。二人の中央にある箱は前文明の技術・知識が詰め込まれているが、今のゼーレにはまだ早く、箱を開ければ飲み込まれてしまう。

漫画のラストではゼーレがこの箱の中で見つけた「再構築」の力をブローニャに渡し、受け取ったブローニャは崩壊3rdでも見せている力を発現させた。灰蛇がブローニャに目をつけていたのも、これが関係していたのかもしれない。

公式漫画「神の鍵秘話」

ケビンが火を追う蛾の戦士として、経験を積んでいく、というシーン。銃を向けられている第六律者と思しき少女がいる。よく見ると少女はゼーレのような容姿をしている。黒いショートカットに、白いトップス、紫のプリーツスカート。幻海の蝶のゼーレもこのような服装。

ページ上部の赤いマークはゼーレの胸元にある聖痕に酷似。ただし左右反転した状態。ファンブックにあった近似種?の聖痕というやつなのか。

以上のことから総合すると

4. 黒ゼーレは死の律者の記憶から生まれた意識

という可能性が高そう。

死の律者の記憶から生まれた黒ゼーレではあるが、通常の律者のような人類滅亡という目的は持っていない。漫画で黒ゼーレが言っているように、「前文明の崩壊への憎しみ」を伝えるために作られた聖痕であるからというのが原因であろう。(白ゼーレの影響も大きそうだが)

律者人格の比較

律者人格であるにも関わらず、人間の記憶の影響から「人類を滅ぼそうとしない」という点では識の律者に似ている。また、「律者の記憶」から生まれたという誕生の経緯については、キアナの空の律者に近いものがある。

逆にゼーレと正反対なのが、ブローニャと芽衣。

孤児院にいた時点で大人びていたブローニャは、最初から「律者人格のない」理の律者コアを継承。芽衣は「キアナを救う」覚悟を決め、律者人格と完全に融合した形。もう一人の私と共存しているゼーレとは真逆の状態になっている。

もう一人の私は崩壊3rdのサブテーマ?

崩壊3rd(と原神)はグノーシス主義の考え方を設定に取り入れたゲームであり、台詞などにもその影響が見て取れる。例えば、薪炎の律者となったキアナもよく「善悪」という言葉を口にしていた。

善と悪はまるで私とあんたみたい、誰の心にも存在して、同じコインの両面、離れることのない光と影みたいなもの。

(中略)

善と悪が共存するからこそ、悲劇を乗り越える明日を作るため、必死に努力しないといけない。

誰にでも世界をより美しくする機会があると、私は信じてる。善意を持つ人はこうやって現れ、受け継がれていく。

善悪と世界について、キアナの台詞 メインストーリー25章より

律者人格=もう一人の私はキアナの台詞からすると悪の側になる。今までのストーリーは、各キャラクターの「悪」との付き合い方を描いてきた。キアナは主人公らしく打ち勝つ、芽衣は清濁併せ呑み融合する。

誰の心にも 自分にしか見えない「悪魔」が潜んでいます

ですが 誰もがそれを克服できるわけではありません

ブローニャによるPVナレーション

自身の中の「悪」を克服できるキアナ達こそヒーロー足り得る。そして、彼女たちを教え導く側の姫子やテレサには「もう一人の私」が存在しない。

崩壊3rdのメインテーマは崩壊との戦い。もう一つのサブテーマは「もう一人の私」つまり善悪の「悪」とどう付き合うか?なんじゃないかなと思う。