スゥが出会った超越的存在

デュランダルに須弥芥子の葉を託し、自身の死を覚悟したスゥ。

今際の際に出会ったのは、宇宙の真理を知る存在だった。そしてなぜか囲碁勝負をすることになる。
原文では「超越人智的存在」=人智を超えた存在。以下「超越的存在」と呼称する。
超越的存在≠崩壊の意思

崩壊の意思の特徴は
- 相手の姿を真似る
- 台詞はいっさい描写されない
スゥの出会った存在は、この特徴に合致しない。
久しぶり

我好久没有遇到『人类』了, 有点闷得发慌了。
久しぶりに「人類」に会って、慌ててしまった。
超越的存在の台詞
中国語での「久」の意味
日本語とほぼ同じ。
好久不见了=お久しぶりです
久の使用例
崩壊の意思が人類に会った時期
スゥが謎の存在に会う以前だと、オットーが崩壊の意思と接触。

オットー:漫画「第二次崩壊」第45話 2000年
スゥ:漫画「伝承」最終話2015年
15年空いている。久しぶり。
英訳では「for eons」

eonの意味は「非常に長い期間」や「永遠」。天文学用語では10億年。
久し、ぶり……?やはりスゥが出会った存在は、崩壊の意思ではなさそう。テイワットの偽りの神に対し、超越的存在は本物の神のようなスケールで存在している。
それにしてもスゥの前に会った「人類」は誰だったのか?
原神のEon
時の砂
原神だと聖遺物「時の砂」に「eon」が使われている。

日本語訳するとしたら「悠久の時の砂」といったところか。
時の神イスタロト

常世大神(イスタロト)は140億の年の母。

140億年:宇宙の年齢。宇宙が誕生してからおよそ138億年だと言われている。
超越的存在は崩壊の意思ではない。そして、崩壊の意思以外で超越的存在に匹敵する神は、イスタロトのみ。今のところは。
碁盤の宇宙
黒い点=星

碁盤で石を置く交点のうち、黒い丸になっている所を「星」という。

ユニバァアアス。崩壊3rdに限らず、碁盤を宇宙に見立てる考え方は存在する。
碁盤を天に見立てた天文学者

例を挙げると江戸時代の天文学者兼棋士であった渋川春海。彼は囲碁に天文学を取り入れ、初手は天元=北極星(天の中心)であるべきとして、対局に臨んだ。
(しかし、負けたため初手天元は止めた。初手天元は勝率が良くないためプロはほとんど使わない)
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白を導く星
天元の黒クリシュナ

デュランダルが騎乗している馬はクリシュナ。クリシュナはヒンドゥー教で信仰される神。名前の意味は黒いや暗い、濃い青などで、月が欠けて暗くなる様子を表す。
クリシュナは叙事詩「マハーバーラタ」の主人公アルジュナを導く役割を持つ。一説によるとアルジュナには白や銀といった意味があるという。
白を導く北極星

キアナにとっての北極星はデュランダル。

「明星のように輝くファトゥスたちは」
「我らの進むべき道を導いてくれるのだ」(中略)
「共に白夜極星へ向かう者を、我らが見捨てることは絶対にない」
冬極の白星
「我らと暗き地に歩もうとする者よ、共に新たな世界を創造しよう」
ファデュイのとっての北極星は執行官。
天理は白
執行官PVで使われた棋譜はAIディープブルーと世界チャンピオンとの対戦。全部で6戦行われたが、AIが白を持ち、唯一勝利した一戦が使われている。
翌年にも対戦が行われ、今度はディープブルーが勝ち越した。ディープブルーは勝利した対戦において必ず白を持っていた。


分点のパラティヌス

天元のパラディン
Palatinus Equinox(分点のパラティヌス)
Palatinus:パラディンの語源。地名。ローマ建国神話で双子の兄弟が最初に街を築いた場所。
Equinox:分点。天文用語。天球上で、太陽の通り道である黄道と赤道が交わる点、また太陽がそこを通過する瞬間。簡単に言えば春分、秋分のこと。
分点(春分・秋分)に関係する記事
デュランダルの装甲がなぜ分点になるのかは分からない。キアナだけでなくデュランダルもテイワットの天球に一枚噛んでいるのかもしれない。
初手天元の意図
初手天元というのはあまりプロでは見られない。

囲碁は石で囲った陣地の広さを競うゲーム。序盤は囲う石が少なくてすむ四隅を狙う方が効率的。漫画中でも天元以外は四隅に石が置かれている。
となると、黒が初手天元を「何らかの意味を持たせて」打ったように感じる。
人を超越したAI
1990年代のチェスAI
執行官のPVに使われた棋譜は1996年のもの。
この時の一連の対戦では1勝しかできず敗北。だが、翌年の対戦では世界チャンピオンに勝ち越し。AIとして初めてチャンピオンに土をつけた。
チェスAIが世界チャンピオンに挑んでいたのに対し、同時代の囲碁AIはアマチュア上級者レベル。膨大な数の局面が存在する囲碁では、強いAIを作ることは難しい。
宇宙レベルの局面を持つ碁
囲碁は四角の中ではなく線と線が交わった交点に石を置く。
碁盤には19×19=361の交点が存在し、初手ではこの361箇所いずれかに打つことができる。2手目を選んだ時点で361×360=129960通りの盤面が存在。
囲碁はチェスに比べて盤が大きく、ルール上存在できる局面は途方もない数にのぼり、おおよそ
2.1×10170
チェスの桁は1050。大きすぎて実感がわかない。
ともかく囲碁とチェスは、真の神と偽の神というスケールの違いを表すものだと言える。(人から見れば強大な存在に変わりがないことも)
プロ最強レベルになった囲碁AI
以上のような理由もあり、囲碁では21世紀中に名人に勝つことは絶望的という見方もあった。
AI開発は停滞するかに思えたが、その後ブレイクスルーがおき状況が一変。プロトップレベルと互角……どころか勝利するまでに成長した。
2018年、ドワンゴが開催した電王戦で3人の棋士相手に2勝1敗で勝ち越し。
敗北確定のゲームをしようとするファデュイ
勝敗の決まったゲーム
乱数の絡まない、純粋な知性のしのぎ合いとなるゲームは、理論上やる前から勝敗が確定している。※双方が最善手を指した場合
ゲームとして成立するのは、不完全な人だからこそ。
人の身で神に挑むのは「愚行」であるように見えるが……
チェックメイトが目的ではない

ルールに則った勝負をした場合、人類に待つのは敗北。ならば世界のルール(理)を書き換えてしまえばいい。
我ら世界定理の不条理と無情を知見せし者、
世界を嘲笑う面を被り、天理を書き換えようではないか。
蒼白の炎 嗤笑の面
道化の狙いは神の定めたゲームで勝つことではなく、人に不利な盤面をひっくり返すことにある。