この記事では古代文字からのラテン語解読は行わない。解読はリンク先参照のこと。
一部のラテン語には元ネタがあり、ローマ神話の月の女神に関する詩をベースにした内容になっている。
鶴観の山を描いた壁画

遺跡内には「星の如き宝珠」というアイテムが隠されており、これをこの壁画にはめ込むと雷霊が出現する。雷霊は鶴観の各地に散り、壁画の星の光のような部分に移動。3体の雷霊を導くと宝箱が貰える。
各山の壁画に書かれたラテン語訳をまとめる。
カンナ山
ラテン語 | In stellaribus fragmentis sapientia absconditur |
英語 | Wisdom is concealed in stellar fragments |
日本語 | 知恵は星屑の中に隠されている |
シリコロ山
[]の中は補った文字。
ラテン語 | Hic tacitus permana[t] calor argen[ta] |
英語 | This silent heat flows through silvers |
日本語 | この静かな熱は銀の中を流れ行く |
他にも「この静かな銀色の熱は、ここに流れる」(または「浸透する」)とも解釈できる。
静かな銀色の熱=月光?
無名の山
ラテン語 | Vigila[c]i cae[lum] est no[thum] |
英語 | To the watchful, the sky is fake |
日本語 | 監視者にとって、空は偽物 |
山の位置と壁画のアングル

カンナ山とシリコロ山はチライ社殿から見た構図。
無名の山の位置は鶴観の東。チライ社殿からではなく、近くの岩場からチライ社殿の方向を向いたアングルで描かれていた。方角的には北西、璃月方面を向いている。
無名の山の壁画には天空島が描かれているが、稲妻からは見えない。仮に天空島が鶴観から見えたとすると、見えるアングルは無名の山かシリコロ山になる。
カトゥルスの詩が元ネタの壁画
実在する山以外の壁画のラテン語には元ネタがある。
リンク先では古代ローマの詩人「ガイウス・ウァレリウス・カトゥルス」の作品だと推定されている。
彼の作品のうちCarmen 34という詩が元ネタ。
2つの月の壁画

ラテン語 | Lunarum [s]u[m]us in fide [puell]ae et [pu]eri integri |
英語 | We chaste boys and girls are under the protection of the Moons |
日本語 | 私達汚れなきの少年少女は、月の保護下にある |

ラテン語 | [Lu]nas pueri integri puellaeque ca[na]mus |
英語 | Let us chaste boys and girls sing of the Moons |
日本語 | 汚れなき少年少女よ、月を歌おう1sing of ~で「~を詩(歌)にする、賛美する」 |
元ネタ詩の該当部分はここ。日本語はこちらで一行ごとに英語から翻訳。
ラテン語 | Dianae sumus in fide puellae et pueri integri: Dianam pueri integri puellaeque cenamus. |
日本語 | ディアーナの庇護下で、私たちは 汚れなき少年少女 少年少女は ディアーナに歌う |
大きい月の壁画

この詩は始めの単語がまるごと消えている。
ラテン語 | [?] [T]rivia et Not[hae] estis luminibus Lunae |
英語 | “You all are Triviae and Moons by (your) fake lights |
日本語 | あなた方は皆、(あなた達の)偽りの光によってトリビアと月と呼ばれる |
原典の該当部分はこちら。
ラテン語 | tu Lucina dolentibus Iunodicta puerperis, tu potens Trivia et notho es dicta lumine Luna; |
日本語 | ルキーナ・ユーノーはこう言われている 産みの苦しみを味わう女性によって 力強きトリビア(三ツ辻)の女神 そして月と、借り物の光であるがゆえに |
原典との比較、解説
壁画と詩の内容を比較してみる。
壁画 | カトゥルスの詩 |
少年少女は月(の女神)の保護下にある 少年少女は月に歌う あなた方はみな偽りの光(月光)によってトリビアと月と言われる | 少年少女はディアーナの保護下にある 少年少女はディアーナに歌う ルキーナ・ユーノーは借り物の光のためにトリビアの女神そして月と言われる |
ローマ神話の女神(太字部分の解説)
🌙ディアーナ
ローマ神話の月の女神。主神ユーピテルとラートーナの娘で多産の女神でもある。
キアナは月の女神から名付けられたが、KianaはDianaつまりディアーナのこと。
豊穣と出産を司り後述のユーノーと領域が重なることから「ディアーナ・ルキーナ」、あるいは「ユーノー・ルキーナ」とも呼ばれた。
🌙ルキーナ・ユーノー
ローマ神話の主神ユーピテルの妻ユーノーのことであり、ユーノーの出産の女神的側面を指す名前。「子どもを光明の中へ出す女神」とも言う。
🌙トリビア
ちょっとした知識……ではなく三叉路つまり3つの(tri)道(via)が交わるところ。また三叉路の神でもあるディアーナのこと。
月の女神ディアーナは三叉路を見守る神、生と死を行き来する冥界の女神としての側面も持つ。
テイワットにはかつて月の女神三姉妹がいた。「3」という数字はここからか。
まとめると、カトゥルスの詩のうち月と出産、子供に関係する女神についての部分をベースにしているということになる。
月の女神に保護された子供達
月の女神に保護されている子供達とは、おそらく鶴観攻略後に開放されるイベントに登場する幻影達のこと。

彼らが鶴観に残す未練をプレイヤーが解消してやると、幻影「船頭」の「銀色の船」に載って月へ旅立つ。幻影達の会話によると月には金色の屋敷があり、女主人が住んでいるらしい。
通常、死後の世界というと地下世界を想像しがちだが、テイワットの冥界は天上にあるようだ。
テイワットの月の女神
原典にはローマ神話の女神の名前が登場するが、壁画の方は固有名が削られている。テイワットの月の女神はアリア、ソネット、カノン。3つとも音楽用語。
書籍「竹林月夜」によるとある時、争いが起って3つあった月が一つになったという。この生き残った月の女神が子供達を保護しているのかもしれない。また狼は月の子であり、亡くなった母を思い鳴く。
船頭によると銀色の船は「太陽と山の子孫」の船であり、「みんな家に帰る」。
地上の人間は元々月の眷属?(単に魂が還る場所という意味か)山は壁画の山のことかもしれないが、太陽の子孫とは?太陽に関係するのは淵下宮の方……。このあたりはよく分からない。
それから女神三姉妹には晨星(夜明け星)の恋人がいた。「絶雲紀聞」では天変地異が起こった時に姉妹と恋人は死に別れたと言われる。幻影の話では女主人しか出てこない。絶雲紀聞の通りに亡くなったのか、あるいはどこか天上ではない場所にいるのか。
カトゥルスの詩を引用している人物
ストーリーと直接関係あるかは不明だが、興味深い人物がカトゥルスの詩を引用したことがある。
その人物はアレイスター・クロウリー。イギリスのオカルティストで、様々な創作物で魔術師のモチーフとして採用される人物。
彼は「法の書」というオカルト本を執筆し、ソロモン72柱が載っているゴエティアを出版した2ゴエティアは元々作者不詳の魔導書の一部で、異なる人物によって複数回出版された。。
その「法の書」の中で彼は詩の最初の部分(少年少女とディアーナの部分)を引用している。
まとめ
実在する山の壁画には旅人への助言・忠告的な文言。
月の壁画にはローマ神話の女神をベースにした月の女神の話が描かれていた。