↑読んでみた「真珠の歌」
真珠の歌とは
キリスト教関連書物「トマス行伝」に含まれるとある詩のこと。
「トマス行伝」は使徒トマスのインド伝道を記述したもの。この行伝は「新約外典使徒行伝」のひとつ。
「外典」とは「正典」に数えられなかった書物のこと。儀典などと言うこともある。教派によってどれを正典(Canon)とするかは異なる。
新約聖書においては、後世に異端とされた「マルキオン派」(グノーシス主義に影響を受けた思想)に対抗するために、正典を定める必要があった、という背景がある。
現在、正統派とされる派閥も、グノーシス主義が流行った時代に、マルキオン派などの他派閥を糾弾することでその立場を固めていったという経緯がある。
そうして正典が定めらた中で、正典に含まれていないということは、
「真珠の歌」はグノーシス主義の影響があるキリスト教関連の詩篇だよということ。実際、グノーシスっぽい描写があるってリンク先の解説でも書かれていたよ。
簡単にストーリーを要約すると
- とある東方の王子が両親によって、大海に潜む龍から真珠を奪う旅に送り出される
- 行き先はエジプト
- 旅先で奸計にあい、王子は自身の目的や出自を忘れしまう
- が故郷からの手紙によって目的を思い出す
- 龍から真珠を奪って、王子は自国に帰った
- めでたしめでたし
始まり
昔、ある東方の国に、贅沢な暮らしをしている王位継承者がいた。
両親は旅支度として、この王子の纏っていた豪華な衣装を脱がせてダイヤモンドの武装を着せ金銀財宝を与えた。
ダイヤモンド:主人公の育成素材であるダイヤモンドはここから来ているのかもしれない。 金銀財宝:ここは底本よって微妙に記述が異なるがインド産の瑪瑙が含まれていた。瑪瑙=アゲート。関連→炎元素の育成素材「炎願のアゲート」
そして旅に送り出す前にある約束をした。
「エジプトに行き、海のただ中で龍に巻かれた一個の真珠を取ってきたら、お前はまたこの光り輝く衣装を着られるだろう。そして、お前の兄弟(第2子)とともに世継ぎとなれる」
この約束を忘れることがないよう、王子の心(魂)に契約として深く刻み込まれた。
こうして王子は二人の護衛(パイモン?)と共に旅立った。
エジプト到着
若い王子にとって道程は険しいものだったが、なんやかんやあってエジプトに辿り着いた。エジプトに着くと護衛は王子から離れていった。(理由はよく分からない?試練か何か??パイモンがスメールでいなくなる?)
王子は真珠を奪うために、龍のすみかの近くに宿をとった。ここである人物に出会い、旅の仲間となった。彼はエジプト人と不浄な人々に与しないように、と警告した。(ダインスレイヴ?)
約束を忘れた王子
王子は異邦人であることを隠すために彼らと同じような衣服を着た。しかし、異邦人であることを気づかれてしまった。彼らは謀を用い、彼らの食べ物を王子に食べさせた。
そのため、王子は約束を忘れ、彼らの王に使えた(アビス教団?)
また、王子は食べ物の重さで眠ってしまった。(お腹いっぱいで眠った??)
故郷からの手紙
王子の危機を知った故郷の両親は、東方の諸侯と王子の兄弟を集めて決議し手紙を書いた。自身の高貴な身分、何故エジプトに向かったのかなどを思い出せという内容であった。
この手紙は鷲の形で王子の元へ届いた。

漫画第1話より。手紙ではないが、天空島から飛び立つ鷲?この鳥はウェンティの近くを通って飛び去っている(何か情報を伝えた?)
※鷲はローマ神話の主神ユーピテルのシンボルでもある
王子目覚める
鷲が王子の元に降り立つと、鷲はさらさらと言葉になった。この音で王子は目覚め、手紙の読みすべてを思い出した。
本来の使命を思い出した王子は、龍に呪文をかけて真珠を奪った。そして不浄の衣服(彼らの)を脱ぎ捨てて帰国の途についた。
帰り道
なんやかんやあって海岸の街に着いた時、両親から国で着ていた衣服を送り届けられた。だが、王子はこの衣服の高貴さを思い出すことができなかった。
※この後何か王子が覚醒するっぽい描写が続くのだが正直意味分からんので、このシーンの描写を列挙する
- 分かれた二つのものは元々一つであった(双子じゃなくて元々は一人の存在だった?)
- 衣服を届けた調度係官も二人だけどひとつの存在?
- 衣服の上には認識(グノーシス)の運動が働いていた
- 衣服はロゴス(言葉)を発しようとしていた
衣服が発した言葉によって、王の愛情を再確認し、王子は衣服と愛情を受け入れた。
追記:二つで一つの王子と衣服
分かたれた二つのものとは王子と届けられた衣服のこと。この二つが再び一つになることで王子は全てを完全に思い出したものと思われる。
綾華の伝説任務で主人公の着物を仕立てようかと提案された際、主人公はこれを断った。また、OPムービーでは双子の衣装の光っている部分の色が白になっている。この時は力を失う前の状態であり、「白」は双子にとって完全な状態を意味する色なのではないか。
原典では王子の衣服にはダイヤモンドが使われている。ゲーム内ではダイヤモンドは主人公の育成素材となる。原典で衣服が特別な役割を負うように、双子の特別な力の源は彼らの衣服なのかもしれない。
帰国後
約束を果たした王子は、父王の諸侯の列に加わった。諸侯は王を褒め称える。
最後に父と王子は、また何か約束を交わした?※
※この約束の意味もよく分からん
「父と共に旅をする。王子は真珠を持って、父と共に我らの王の前に登場する」
我らの王って誰?
掲載元による解説部分について
訳者の方による解説から気になる部分について言及する。
王子は、救済者キリスト。
手紙は主の御心を意味し、救済者であるキリストが主によって救済されることを示している。
真珠を取り巻いている龍は蛇?のことらしい。蛇は原初の混沌だとか悪、悪魔を意味する。
取り巻いている蛇=蛇輪座=ダインスレイヴ??途中で忠告する旅の仲間もいるし複数の役割を負っている??
こっちの動画でも主人公の前に立ちふさがる的なことを言っている。
海は「死すべき多様な種族の人間が沈み込んだ闇の世界」らしい。地下世界や深淵のことか?
真珠は超自然の魂であり「真の自己」。グノーシス主義で人間が認識(グノーシス)すべき本質的自己のこと多分。本質は至高神と関わりがある部分でこれを認識し、本来あるべき場所に帰ることがグノーシス主義が求めるものらしい。
元ネタでは真珠は海にあるとされているが、原神の真珠の歌では山の上にある。

まとめ
よく分からない所も多かったが、二つで一つ=双子が元々一つだった?とかダインスレイヴのキャラ設定に関わってそうな部分が見つかった。
王子が旅立つ時についた護衛(違う底本では案内人)も2人だったし、パイモンにも何か二面性があるのかもしれない。
「蛇」に対する勝利は、闇に勝つ光であり、救済者自らが、怪物に飲まれて内側から闇を滅ぼす。これは、太陽神話と英雄神話の結合した形であり、キリストが冥府に降ってこれを滅ぼしたというのも、この主題に属する。
「真珠の歌」
太陽のモチーフはいくつか登場済。闇の世界に行って闇に飲まれた双子の片割れを救うキーワードが太陽?
余談:使徒トマスの双子の兄弟
真珠の歌が含まれるトマス行伝の使徒トマスの名前はアラム語の原義で「双子」を意味する。何故、この名前なのか、誰と双子であったかは定かでははないが、イエスと双子であったいう説も存在する(ここでいう双子は実の兄弟とは限らない)。→トマスによる福音書 – Wikipedia
闇に飲まれた救世主=プレイヤーが選択しなかった方の双子、トマス=プレイヤーが選択した双子という見方もできるかもしれない。