イスタロトの元ネタ

時の魔神イスタロトの元ネタはゴエティアに登場する悪魔アスタロト

アスタロトは旧約聖書で預言者達の攻撃の的にされた異教の女神アシュトレトのこと。

アシュトレトはギリシア語での表記で、元は古代オリエントの女神アスタルテ

イスタロト(魔神)→アスタロト(悪魔)→アシュトレト(旧約聖書)→アスタルテ(古代オリエント)

古代オリエントの女神アスタルテ

古代オリエントは大体このあたり。エジプト、メソポタミア、ペルシャなどの古代文明が栄えていたあたり。アスタルテは古代オリエント世界で信仰された豊穣神。

古代オリエント世界の地図、ピンク色の国はシリア(後で言及)

ウガリット神話のアスタルテ

古代オリエントの中でもイスタロトに深く関係するのはウガリット神話のアスタルテ。ウガリットは現在のシリアにあった都市。

アスタルテは最高神エルとバアルの妻。ギリシア神話でのヘラやローマ神話でのユーノーにあたる。実際にギリシア、ローマでもそれらの女神と同一視され信仰された。

アスタルテには姉妹のアナトがおり、エルの引退後に姉妹共にバアルの妻となった。

アナトはバアルの権力を確固たるものにするため、数々の活躍をする。しかし、アスタルテは彼女に比べて記述が少なく影が薄い。

エジプトの女神 アスタルテ

アスタルテはエジプトへも渡り、戦闘女神、王の守護神として信仰された。

エジプトではアスタルテは武装した姿で描かれることが多く、彼女を守護神とするエジプト王もいた。

この性質の違いは姉妹アナトの影響。バアルの協力者、戦いの女神としてのアナトは残虐に描かれる。バアルを殺した死神モトを火で焼き、臼で粉々にしたこともあるほど。

武力に秀でたアナトと影の薄いアスタルテという姉妹は、イスタロトよりも雷電将軍の方に影響を与えているように思う。

時の魔神は140億の年の母

また、この謎題は遥か昔に後続版が存在した。おおよその内容は、それぞれの孫娘が十二人の子供を産み、その子供たちもそれぞれ六十人の孫を産んだ。そして孫たちも、それぞれ六十人の子供を産み、その子供も自分たちの子供がいた。そして最後、すべての子孫たちが唯一、原初となる子孫を産むことになる。その子孫こそが常世大神であり、百四十億の「年」の母である

白夜国館蔵第5巻

「百四十億年の母」という形容に関係すると思われるのが、元ネタとなった女神の名前の意味。

旧約聖書のアシュトレトはヘブライ語で増大、子孫の意。

ウガリットのアスタルテは子宮もしくは子宮から生じるもの

※140億年:宇宙が誕生してからの時間。だいたい138億年と言われている。

参考文献

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